許可を得ずに「クラブ」を営業し、客にダンスをさせるなどしたとして、風営法違反の罪に問われた元経営者が無罪となるニュースが話題となりました。
「飲食店を装って客にダンスをさせた」などと言われても、何が悪いのか分からないという方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、ダンスをさせることの何がそもそも悪いのか、法律制定の背景をふまえ見ていきたいと思います。
クラブ・ダンス
風営法という言葉をお聞きになったことがある方は多いと思います。
正式には「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」という長ったらしい名前になっています。この風営法ですが、おおざっぱに言ってしまうと、飲食店のうち女性が接客するような店、パチンコやスロット、麻雀などギャンブルに関する店、性的なサービスを行う店の営業に関しいろいろ定めている法律なのです。
この風営法なのですが、法律ができたのが実は昭和23年のことでして、非常に古い法律です。その証拠に条文中には「待合」「キャバレー」「カフェー」など、昭和が色濃く残る言葉が残されており、それがまた懐かしくもあったりするのですが、それはさておき、風営法はたびたび改正は行われているのですが、それでも現状に合っていない点が多数あり「時代遅れの法律」として問題視されてきました。
その一つが今回話題になっている「ダンス」です。
■許可が必要で営業は深夜0時まで
ダンスについて風営法では、「ナイトクラブで客にダンスをさせる営業」「ダンスホールでダンスをさせる営業」が風俗営業とされ、営業するためには公安委員会の許可が必要であり、また営業時間は原則として深夜0時までとされているのです。
しかしながら、そもそも「ダンスホールでのダンス」や「ナイトクラブ(今でいうところのクラブ)」の営業を風営法で取り締まる必要があるのか、深夜0時に限る必要があるのかという点はかなり疑問でありました。
このような規定ができた背景なのですが、先ほど述べたように、この法律ができたのは昭和23年と戦後間もないころであります。
その時代は男女がダンスをするという行為自体がそもそも男女の性風俗秩序を乱すものという風潮があり、また、ダンスホールやナイトクラブでダンスをするという名目で売春行為も行われていたようです。そのため、それを取り締まるために制定されたという経緯があるのです。
■クラブだからと言って
しかしながら、現在ではダンスをすることが性風俗秩序を乱すなどという人はまずいないでしょうし、クラブでの売春行為は別の手段で取り締まればいいことですから、風営法で取り締まる必要性がないことになります。そんな主張を取り入れたのが今回の大阪地裁の判決であります。
簡単に言えば、クラブだからと言って一律に風営法で規制するのは過度な規制であり、もっと個別具体的に判断すべきだ、その上で、本件については性風俗秩序を乱すものではないため無罪と判断したのです。
裁判所もさすがに風営法は時代錯誤の法律であり、本件での適用は難しいと考えたのでしょう。
その意味では妥当な判決であると思います。この判決をもとに警察の対応も変わると思われますし、国会で抜本的な法改正をする動きも出ているようです。風営法の今後の動きに注目したいところであります。
元記事 : シェアしたくなる法律相談所 配信日時 : 2014-04-29