PEOPLE

DJ HIROKINGが語る。クラブが危ない。ダンサーの行き場所は!? 

クラブが危ない。ダンサーの行き場所は?

最近ダンスシーンを大いに騒がせた風営法。ダンスをすることがまるで悪であるかのように、マスコミは連日に渡り報道した!!
しかしなぜその風営法がダンスシーンを苦しめているのか?そもそも何故、ダンスが違法なのか?
その真実を探るべく「風営法」に対して疑問を投げかけ、クラブファンの注目を集めているHIROKINGにインタビューを試みた!!

STAFF
現在のCLUBの風営法の流れを教えて下さい
HIROKING
法律の専門家じゃないので正確な話は出来ないと思いますが、僕がわかる範囲でお話をします。
おおざっぱに言うと、今日本にあるクラブのほとんどが法律的にはアウトです。何がダメかと言うとポイントが2つあって、「お客さんが踊っている状態」と「24時以降の営業」です。風営法のもとでは、お客さんにダンスをさせる営業(お客さんが踊っているクラブの状態をする場合は、風営法に基づいた許可申請が必要です。ただし、それをやると深夜24時以降の営業が出来ません。現時点で朝まで営業しているほとんどのクラブは「深夜にお酒を提供する飲食店」としての営業許可をとっていて、「お客さんにダンスをさせる店」ではないという事になっているんですよ。
その場合に何が問題かというと、警察に踏み込まれた時に「何やってんだ客に躍らせてDJまでやって大きい音かけて・・・」と検挙されて、風営法に基づいた営業許可をとり直せと言われます。しかしそれをとったが最後、深夜の営業が出来なくなるという事なんです。でも、昔からこの部分はずっとグレーみたいです。多分、取り締まるかどうかは、警察のさじ加減ですね。よく聴く噂では、風俗店の取り締まりを担当するのって生活安全課なんですけど、そこの偉い人が転勤した時とかに、新たな土地で手柄をたてるために、グレーって分かってる部分から手を入れていくことが多い、っていう風に言われてますよね。警察からすれば、点数かせぎの絶好の場所なのかもしれませんね。
STAFF
この現状を受けて感じることは?
HIROKING
おかしな法律というか、今の時代にそぐわない法律になってしまっていると思います。本当は法律って世の中の流れに合わせて変わっていくものなんですよね。だからこそ、今の世の中に必要な法律が存在しないってこともあるわけです。そもそも戦後に風営法が制定されたところに、大人の社交場を取り締まるような法律がなぜ出来たのか。バックグラウンドにあるのは売春を抑制するためのものと聞いてます。当時、売春婦と出会う場所はダンスホールと呼ばれる場所だった訳ですよ。そこで男女の身体を密着させて踊りながら相手を探すというのが、当時のやり方。売春婦にとってもお客様を探す場だったんですよね。売春は駄目だと言っても、なかなか消滅しないじゃないですか、いつの時代も、どこの国も、法の抜け穴に合わせて形を変えて。日本においてはその時代の代表的な形がダンスホールだったんでしょうね。
当時の国会の議事録を見ると、性風俗の規制の話をするときにはいつも「キャバレー、ダンスホール、社交喫茶などの…」っていう具合に語られてます。それくらい、ダンス・ホール=性産業という認識が当時の常識だったんだと思います。
でも50年以上経って、今は誰もクラブで売春していないじゃないですか。目的を忘れた法律が今の人々を苦しめていますよね。今僕らがやっているダンスと売春は全く関係ないじゃないですか!いまダンスは義務教育にも入るくらい健全なものと国が捉えている。それが理解されないまま、かつ時代遅れな目的を見失った法律に基づいて取り締まりを行う事は、人々を苦しめるものでしかないと思います。
STAFF
今後どういった展開になることを望みますか?
HIROKING
2つあって、一つは「ダンス」という言葉を正確に定義して、時代に合った形に風営法が変えていって、適切な取り締まりが行わるようになってほしいと思います。単純に、この法律がなくなればいいかと言ったらそうではないんですよね。僕らが真剣にやっているようなダンスもあれば、男女の出会いが目的で音楽なんて何でもよくて、いかがわしい部分ばっかりのところもあるのが現実。
正直、「取り締まられた方がいいよ」と思うクラブもありますよ。クラブの全てが健全で、全てが文化的な価値があるとも思わないので。でも、真剣に音楽や踊りを楽しむクラブが追い詰められてくのはよくないですよね。
だからこそ、「ダンス」という言葉を細かく定義する必要があると思います。今はダンスというものが色んなものを含む時代になって来たので、男女が密着してお酒を飲みながら踊るものなのか、アートとかスポーツの側面を持ってやっているものなのか、音楽聴きながら体揺らしてるだけなのか。これを定義するのは非常に難しいものだと思います。
もう一つは、クラブの経済的な価値とか文化的な価値を、再確認することだと思います。
日本の音楽チャートのトップにいるExileとかケツメイシみたいなアーティストが生まれるような場所なわけだし、欧米だったらクラブミュージックがトップチャートにないことなんてありえないじゃないですか。そういう文化的な価値と、あと経済的な価値。深夜に1000人以上が集まる商業施設とか飲食店なんて、他にないでしょ?1000人が踊ってお酒飲んでるってことは、そこにはお酒の流通があって、クラブがなくなったら困る酒屋さんとかお酒のメーカーさんがいるわけですよね。他にも音響・照明の業者さんとか、内装業者さんとか、広告会社とか、もちろん僕らみたいなアーティストも含めて、いろんな業種の人が関わってる。クラブってお客さんが使ったお金を、関係業者に再分配してるわけですよね。いま不景気だってのに、経済を回す中心地をつぶしちゃダメでしょ。クラブを一斉になくしたら、どれだけの失業者が生まれることか。そういう、他の業種にないパワーを持ったカルチャーだってことに、もっと多くの人に気づいてもらいたいですね。
STAFF
最後に
HIROKING
風営法を変えるような運動を、みんなでやってかなきゃいけないですよね。ダンスを一律に悪いこととする法律をこのままにしておいたら、必ずいつか大変な目に合う。みんな知らないと思うけど、ダンススクールですら、社交ダンスの民間団体が発行する資格を持った人が教える場合以外は、風俗の扱いになるんです。だから、現状取り締まりが行われてないだけで、クラブと同じようにグレー。そのうち警察が点数稼ぎにきちゃうかもしれないわけです。生活安全課に問い合わせたことがありますが、「法律に基づいて取り締まります」って言われましたよ。悪法であっても、それに基づいて行動するのが警察のミッションだそうです。そんな不条理に怯えながら生きていくのなんて嫌ですよね。
だから、この法律を絶対に変えたいし、日本が誇る天才キッズ達が、自信もってダンスやれる世の中にしていかなきゃいけない。そういうことを真剣に考えるからこそ、都知事選とか大阪市長選の候補者に公開質問状を出したんです。回答をまとめたものを僕のWebsiteで公開したら、すでに20000回以上リツイートされてるんです。それくらい、みんな気になってるってことですよね。でも、実際にアクションとる人ってほとんどいないじゃないですか。大切なものは自分で守る。そのためにやれることを、先頭きってやっていくつもりです。