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EDMブーム、ダンス規制 変化する客層…クラブシーンは今どうなっているのか?

ダンス・ミュージックが本格的にJPOPに採用されるようになってから随分経つ。そんな中、新しいカルチャーを絶えず発信し続けている場所が、ダンス・ミュージックの“現場”と呼ばれるクラブだ。そんなクラブの現状はどのようなものか。レコード・ショップ『CISCO』のヒップホップ・チーフバイヤーとして渋谷宇田川町の一時代を築き、DJはもちろん、ラジオ・ディレクターやライターとしても活躍するYANATAKEが、クラブ・カルチャーの“今”を切り取る。

YANATAKE
今のクラブは最高に楽しい場所
 「最近のクラブってどうなのよ?」よく聞かれる質問ですね。ハッキリ言っておきますけど、今は最高に楽しいですよ! 「クラブ全盛期は20年前」という意見もあるようですが、ラウンジ・スタイルのような営業形態の店がオープンしたり、大なり小なりクラブの数は増え続けているし、ジャンルが細分化されても、SNSなどを通して好みの音楽がかかっているクラブを探すのは難しいことではなくなりましたからね。これって最高じゃないですか。

 都内であれば平日でも、自分好みのパーティは必ず見つかる時代。「最近のクラブは面白くない」という人の話は信じなくていいですよ。それは現代音楽のスピード感についてこれなくなった世代のひがみに過ぎません。人気DJ/プロデュース・ユニット:HABANERO POSSEのGUNHEADくんの名言で「最近良い曲がないとか思ってる人は自分のDIG能力を疑え! 」とまったく同意見で、クラブを楽しむにも「自らが嗅ぎ分ける情報収集能力が必要」になってきた、ということでもあるのです。もしくは内容面でネガティブなイメージを抱く人がいるのは、主に“EDM”(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)というジャンルに対するアンチな物言いでしょう。これも間違っています。

 ヒップホップ系のDJが流行を取り入れた先に生まれたのがEDMブームのひとつの側面。結果的に一般リスナーにも浅く広がり、それが飽和した途端に、EDM自体が悪く言われている。それが現状でしょう。

 でも、EDMはレディー・ガガやリアーナのようなアーティストのヒット曲からもわかるように音楽業界を席巻しているジャンルだし、世界で何十億円も稼ぐトップDJはEDMをプレイしている人たちばかり。これからは日本でも本職として追求して、活躍していけるDJがたくさん生まれていくはず。

 “チャラ箱”と言われるようなクラブでは、何年経っても同じEDMの曲が繰り返しプレイされることがあるので、こういう意見が出てしまうのは仕方ないかもしれませんが、実は新しいジャンル/新しい層へのマーケティングとしての結果であり、チャラいことを振り切ってやっているという意味では意識が高いんです。つまり、半端に触って放り出してしまった人たちよりも遥かにプロフェッショナル。実際、そういうことに徹底しているクラブのほうが集客があったりします。

ライトな層も気軽にクラブを楽しめる時代
 「楽しい=人が大勢いる」いう考え方もあるので、ビジネスとしての成功を考えるのであれば間違ったやり方ではありません。このような場所を好む新しい客層に関しては、クラブの楽しみ方自体の本質も変わりました。それは、カラオケ的な感覚で遊ぶ層が参入した、ということ。カラオケで知らない曲を歌われても盛り上がりませんよね? みんなと一緒に知ってる曲で騒ぎたい! という人口が圧倒的に増えたんです。裏を返せば、それだけライトな層も気軽にクラブを楽しめるようになったわけです。コアな層もこれをひとつのチャンスだと思わないとね。今は多くのクラブがセキュリティを雇い、入場時にはIDの確認や荷物のチェックもされるし、安全面でもキチンとしているところがほとんどです。

 健全に遊べるのは、むしろクラブかもしれない。これから初めてクラブに行くような人たちも、興味が沸いたらまずはSNSで情報収集をしてみてはどうでしょうか。そこにはディスカウント合戦のような触れ込みも多数存在しますが、自分に合った音楽の情報をしっかり発信してくれているDJもたくさんいます。それらとうまく合致すれば、安くカッコイイ音楽で遊べるチャンスはいくらでもあるのです。

 メディアでも取り沙汰されている風営法では、都内よりも地方都市の方がそのイメージは深刻な問題となっていますが、これをきっかけに問題が改善されたり、より遊びやすい環境になるよう働きかけている業界人や政治家もたくさん出てきました。オリンピックの開催も見据えて、世界水準に合わせたエンターテインメントの場所として成長していけることを目指して、さらに盛り上がっていく可能性を秘めているのです。

 冒頭にも書きましたが、日本のクラブ/DJは好みの音楽を追究できる素晴らしいシーンでもあるので、僕らは様々な音楽を楽しんでもらうための場所を作り続けますよ。期待してください!

YANATAKE
 レコード・ショップ『CISCO』のヒップホップ・チーフバイヤーとして渋谷宇田川町の一時代を築き、レコード・レーベル「Def Jam Japan」の立ち上げやMTV Japanに選曲家として参加するなどヒップホップ・シーンの重要な場面を担う。DJとしてはClub Harlemでのイベント『Honey Dip』やYellowでの『FOWL』など、DJ HasebeやDJ Wataraiらと長期に渡り活動中。
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元記事 : realsound 配信日時 : 2013.12.09