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ジャニーズのダンスはどう進化してきたか その独自性を支えるキーパーソンたち

歌って踊れるアイドル--今ではアイドルを語るものとして一般化したこの言葉も起源を辿るとジャニーズに行き着く。しかし彼らのダンスは他のアイドル、例えばヒップホップをベースにしたEXILEのダンスや韓流スターのそれとは明らかに毛色が異なる。女性アイドルの可愛らしさ、親しみやすさを全面に出した振り付けとも違う。彼らのダンスにオリジナリティを与えているものは一体何であろうか。

 ジャニーズとダンス、それを語る上で欠かせないのがミュージカルの影響である。高校時代にロサンゼルスの「アーニー・パイル・シアター」でアルバイトをしており、様々なステージを目の当たりにしていたジャニー喜多川氏。帰国後に地元の少年たちを集めて「ジャニーズ少年野球団」を結成、メンバーとともに鑑賞した映画『ウエスト・サイド物語』に感動したことがきっかけとなり「このようなアメリカン・エンターテイメントを日本にも広めたい」という思いからジャニーズ事務所は設立された。ゆえにジャニーズのコアは設立当初からミュージカルにあり、ライブパフォーマンスにおけるダンスもミュージカルを基調にしたものとなった。ジャニーズのダンスに見られるストーリー性や後ろで盛りたてるジュニアたちといった構図は、明らかにミュージカルのそれを踏襲したものと考えられる。

 ミュージカルをベースに作られるジャニーズのダンス。そこに現代的な要素がミックスされるようになったのには振付師のSANCHEこと阿部雄三氏の功績が大きい。フジテレビの深夜番組「Dance! Dance! Dance!」の人気コーナー「MEGA-MIX」のメンバーで、初期trfにおいてもダンサーとして活躍していた阿部氏。ニューヨークでジャニー喜多川氏にスカウトされたのをきっかけに少年隊のバックダンサーとなり、その後ジャニーズ専属の振付師としてSMAPやKinKi Kids、V6、嵐などのダンスを担当。ジュニアの指導も積極的に行っている。当時のダンス文化の第一線で活躍していたパフォーマーの彼が振り付け師として加わったことで、ジャニーズのダンスにも近代的なエッセンスが多分に取り入れられるようになった。代表的なところでは「ロックダンス」と呼ばれるもの。スムーズな動きから音に合わせて身体を固める(LOCK=鍵をかける)動きが特徴のロックダンスは1970年代以降に生まれたもので、元々はソウル・ミュージックやファンク・ミュージックで広く普及したものだった。それをジャニーズの歌謡曲調な音楽に乗せてミュージカルをベースにした踊りと融合させることで、彼らのダンスは他に類を見ない極めて独特なものへと進化していったのである。
最近では阿部氏のもとでダンスを学んだメンバー各自が自身の振り付けを考えることも多くなった。また外部の人気パフォーマーに依頼する機会も増え、ジャニーズ内部でも屋良朝幸氏のような新しい世代の振付師が活躍するようになってきている。ミュージカルを発祥としたジャニーズのダンスは日本のアイドル文化という文脈にローカライズされ、新しい風を取り入れながら今なお進化を続けている。
(文=北濱信哉)

元記事 : Real Sound
配信日時 : 2013.11.13