キレのあるダンスとノリのいい音楽で、1990年代を代表するダンスボーカルユニット「TRF」。結成20周年を記念して制作した、ダンスとエクササイズを組み合わせたDVD「TRF イージー・ドゥ・ダンササイズ」が大ヒットし、再び注目を浴びています。TRFのSAMさんにダンスの魅力について、小町さんが聞いてきました。
Q イージー・ドゥ・ダンササイズが生まれたきっかけを教えてください。
A TRFの結成20周年ということで、応援してくれるファンのみなさんに何か還元できないかと思って考えたんです。以前、ダンスのHow ToのDVDを作ったんです。でもプロダンサー向けの本格的なものだったので、普通の人が踊るには難しすぎた。誰でも踊れて楽しめるものを作れないかな――というところからスタートしました。
Q 大ヒットしましたが、その魅力はどこにあると思いますか?
A 耳になじんだ曲で踊れるのが大きいと思います。よく知っている曲が聞こえてきたら、体が自然に動いてしまうことってありませんか? DVDを買ってくれた人たちは、かつてTRFの曲を聴いてくれていた30~40代が多いんです。それに、ダンスには振りを覚える楽しさ、踊れたときの達成感があるんです。もっとうまくなりたいという向上心が加われば、さらに効果があがります。好きな音楽を聴いてるだけでも楽しい。踊れたらもっと楽しい。効果が出ればうれしい。
Q 初心者にも踊りやすい振り付けを作るために、いちばん苦労したところは?
A 簡単だけど格好よく見える振り付けを考えるのが大変でした。さらに引き締め効果があること。ダンスのエクササイズですからね、ここは大切です。腰回りを引き締めるならツイストを多くするとかね。
Q 振り付けは、どうやって作るのですか?
A ダンササイズはいくつかのパートに分かれています。パートごとに、ぼくとETSU(エツ)とCHIHARU(チハル)の3人で振り付けを考えます。作っているうちに夢中になって、難しい振り付けにしちゃうんです。そこで、一度作ったら、エクササイズの監修の先生に見てもらう。「ここはもっと簡単な動きがいい」などアドバイスをもらって、難しいところがあったら手を入れる。そうやって作り込んでいます。この作業をだいたい1日で終わらせています。
Q 1日でできちゃうんですか? すごい。ひととおり踊ってみたんですけど、SAMさんの教え方がすごく上手で、わかりやすかったです。
A ぼく、教えるのうまいですよね! いちばんうまいでしょ? みんなに言われます(笑)。
Q あ、私にもできるかも……と思わせてくれる。
A できるんですよ、あなたにも(笑)。とくに東方神起の『OCEAN』はノリがよくって覚えやすい振り付けになってます。自然に体が動くでしょう? オリジナルの振り付けのいいところを生かしながら、引き締め効果などを取り入れてアレンジしたんです。
Q 最新作のDVD『avexスペシャルエディション』は4枚組みで4曲入っていますが、選曲のポイントは踊りやすさと、ほかにありますか?
A 倖田來未さんの『Butterfly』は、腰を回す動きが多くてセクシー。これは腰回りに効くからウエスト集中プログラムに合う。初心者にとってはステップがいちばんの難関なので、比較的にゆっくりステップが踏めるTRFの『Love & Peace Forever』を下半身集中プログラムにしよう……そんな感じで組み合わせていきました。
Q TRFのように格好よく踊るコツを教えてください。
A 少しぐらい不格好でもいいから繰り返し踊ることかな。慣れてくれば動けるようになるし、ポーズもつけやすくなる。振り付けが覚えられないなら、コマ送りにして、ゆっくり一つ一つの動きを確認してみる。何回も踊るうちに必ずうまくなります。やせることも忘れるくらい夢中で踊っていたら、代謝が上がって、体つきも変わってきますよ。
Q 選ばれた特別な人がダンスを踊ると思っていましたが、最近は公園などで子どもたちが普通に踊っているのを見かけます。中学校でもダンスが必修科目になりました。ダンスの時代が来た!という感じですね。
A 世の中にダンスが浸透してきたことを実感します。1990年代はダンスができる“キッズ”は少なくて、ちょっと踊れたら「スゴイ!」と言われる時代でした。キッズのオーディションをやっても、各地で5人集まればいいほうでしたね。2000年に入ったころから100人、200人と増えていった。いまは、日本中にダンスのうまいキッズがたくさんいます。
Q TRFがデビューした90年代にダンスシーンの転換期があったように思います。
A ボーカルがいて、ダンサーがいて、DJがいる。そういう形のグループはTRFが初めてでしたね。アイドル的な振り付けから、アーティストが本格的なダンスを踊るようになったのも、TRFからですね。
Q 今後もダンスシーンは変化していくかもしれませんね。いまのダンスブームをどう思いますか?
A ダンスブームって、かつてのバンドブームと同じだと思うんですよ。70年代に“とんがってる不良”がバンドを組んでロックをやっていた。その中から、レベルの高い人ロッカーが出てきて、そういう人たちが有名になって、多くのバンドが生まれた。ロックはポピュラーになって、ギターやドラムを演奏することが特別なことじゃなくなった。選ばれた人たちのやるロックから、普通にみんなが楽しむロックになった。ダンスも90年代に“とんがった”若者が外国のダンサーをまねて、格好いいダンスを踊っていた。特別な存在だった。でもいまは、誰でもダンスを楽しんでる。その中から磨きをかけた、レベルの高いアーティストがどんどん出てくると思う。ぼくらがやっていかなきゃいけないのは、ダンスの層を広げつつ、質を落とさないようにクオリティーを高めていくことかな。
Q SAMさんの引き締まったスタイルは、どうやって維持しているのですか?
A 特別なことはやってないです。自分なりのダンスのレッスン法があって、週に3~4日くらい踊ってます。いくつになっても踊っていたいなと思うので、ダンサーとしての体形のキープは意識してます。ぼてっとしていたら、見てる方も気になるでしょ? 「踊るの大変そうだな―」なんて思われたらいやだしね。若いころは毎日、それこそ一日中踊ってました。そのときの“貯金”みたいなものは残ってますね。からだがなまっていても、少し踊ると筋肉が元に戻るんです。形状記憶“筋肉”ですね(笑)。
Q 私も引き締めたいんだけど、ずーっと運動をサボってたから、もうムリかなあ。
A いや、まだまだ間に合いますよ。何もやってなかったから、逆にちょっとやれば効果を感じますよ。一度、絞ったからだにすれば、筋肉が形を覚えますから。きっと大丈夫。
Q だんだん踊りたくなってきた。SAMさん、教え方だけじゃなくて、やる気を出させるのもうまいなあ。
A そうでしょう(笑)。小町さんもダンスをもっと楽しんでください。
Q TRFの今後の活動予定をおしえてください。
A いまTRFはそれぞれ個人の活動をしていて、みんなでいっしょにやることが少ないんですよ。できれば、近いうちにツアーができたらいいなと思っています。いま、中学だけでなく、高校のダンス部の盛り上がりもすごいんですよ。高校生ダンサーを集めて、ダンスコンテストやワークショップもやりたいですね。
元記事 : YOMIURI ONLINE 配信日時 : 2014-03-04